●妊娠5ヶ月

石清水八幡宮にお参りに行った
戌は多産でありお産自体も軽いので安産の象徴とされている
それにあやかるために戌の日に参拝し、腹帯をいただく
いにしえから続く風習である
禊ぎを受ける
玉串奉納・二礼二拍手一礼 
旦那のやり方をちらちら見ながらなんとかやり終える
赤ちゃんにどうか大神様のご加護がありますように・・
お宮の中を散歩する
鎮守の森の清浄な空気を吸うと、お腹の赤ちゃんの体にも
なんだかいい影響がありそうなので
鼻を広げて、グオーと酸素を吸い、プオーと二酸化炭素を排出 
地球温暖化を進めてどうする
(昔除夜の鐘を聞きながらお寺に参拝に行き、線香の煙を「頭に効くかも」
と頭を突っ込み、ひたすら手で仰いでいた
そんななつかしい自分がフラッシュバックした
その件は効果がなかったというオチが付くことは想像に難くない)
帰宅後、説明書を手に旦那が腹帯を巻いてくれた
デジカメで記念写真を撮った
(結局いただいてきた腹帯はさらし型で実生活で使うには少々勝手が悪いので
ガードル型の市販品を主に使うこととなった)
最近お腹の膨らみが尋常では無い
前に突き出ると男の子、横に広がると女の子という一種の迷信がある
私は後者であった
またしても「赤ちゃんの性別は女」説が濃厚となる
お腹の重さにバランスを崩すことが多く、
ふらつけばふらつくほど確実に赤ちゃんが成長していることを実感
旦那は、周囲の者にきっと子煩悩になると言われていたのだが、
その頃からお腹の中の人によく話しかけるようになり、
外の人である私のことなど全く眼中にない
予想を裏切らない漢(おとこ)である

深刻な事態が発生した
妊娠してから痔に悩まされていた
それが悪化したのだ
いつものことだからと放置しておいたのだが
今回は何かが違う
いつものがピーヒャララとすれば今回のはドコドコドコ
ズンドコドコそしてズキズキズキ qあwせdrftgyふじこ!
これははっきりいってヤバイ
病院に行くにも電車とバスを乗り継がないといけない
歩くことすらままならない
今すぐなんとかしないといけない事態なのだ
切羽詰まった私は這うようにつわりの折りお世話になった
薬局に辿り着いた
またしても例の親切なお兄さんが笑顔で出迎える
はっきりいってそのさわやかささえお尻に響く
喉がうねるような声で「ステロイドが入っていない痔のお薬をください」
と伝えた
一刻も早くお尻の状態を緩和したい
お兄さんは「座薬と軟膏どちらになさいます?」と尋ねてきた
もうなんでもいいからなんとかしてくれ
「両方ください・・・」
お兄さん心配顔で話しを続ける
「今の季節柄体が冷えやすいので『痔』は悪化しやすいんですよ・・・
もともと人間は二足歩行を始めた段階でお尻に負担が・・・(略)」
もういいから お願い早く商品を包んでください 
もう北京原人でもクロマニヨンでもアウストラロピテクスでもなんでもいいので早く・・
「あ、そうそう案外足から冷えるものなので足湯なんか『痔』にはお薦めですよ」
「本当に『痔』は悪化したらだめなのでお風呂でようく体を温めて(略)」
親切過ぎます
「で、ですねこの場合(略)」
解放してくれー私が何をしたー
これは何かの陰謀なのか?
もしやあなたは空から降り立った時期はずれの恐怖の魔王なのか・・・
もうお尻に火がついている 
だんだんと体がくの痔、いや、くの字になってくる
お兄さんの横にいたお姉さんがハラハラした顔で二人のやりとりを見ている
もうダメだ
足はこの上なく内股になり泣きそうになった
その瞬間お兄さんは手を前に差し出したまま眉を八の字にしてこう言った
「で、そのお方は相当お悪いのですか?」
「私です・・・」
その瞬間その場にいた三名が皆ボンドで接着したかのように固まった
お兄さんはそそくさと商品を包み手渡してくれた
お姉さんは心ここにあらずといった声で「アリガトウゴザイマシタ」と言い
私は足をひきずるようにして傷心のまま店を去った