●妊娠8ヶ月

忙しくなってきた
将来設計の英断を迫られることがまた起きた
新居購入
そもそも旦那の独身時代からの賃貸のマンションに無理矢理
に詰め込んで暮らしていたので狭い
これで子供が産まれるとパニックは確実
それでものんびり屋の夫婦はまだ数えるほどしかモデルルーム
を見学していなかった
たまたま新聞の広告で見た、とあるモデルルームが
「最終締め切り間近」と書かれており
旦那が「あ、ここ気になっていたんだよね」と言うのにつられて
なんとなく申し込んだ
見学日 これまで廻ったモデルルームはかわいい感じやオシャレな
感じを醸し出していた
そこを奥様いかがでございますかと一押しされ続けてきたのだが
私はそれよりも防音はどうなんでしょうと組織から逃げて隠遁生活を
強いられているスパイのようにとんちんかんな質問ばかりして旦那に
失笑を買い続けてきた
その日のモデルルームはかわいくもオシャレでもなかったが
出っ張りが少なく天井が高く飾らない感じがなぜか私の心のひだを刺激
し、俄然購入意欲が出てきてしまった
部屋の検討を深夜まで旦那と続け真夜中にその結果をFAX
それまでは「あなたに一任します」と三歩下がって付き添う感じだったのに
仮申し込み日に旦那をたたき起こし担当者の説明もそこそこに
早く仮申し込みの証しの薔薇を、部屋一覧表に刺して差し押さえしたい 
薔薇を薔薇を とベルサイユの如く吠え
担当者も
「・・・この奥さん以前はおとなしかったのにどうしたんだろう・・・」
と気迫に押された形で
「はいっ!薔薇刺してきました」と小走りしてきた
緊張の抽選日 希望の部屋は私達のみの申し込みであった
不戦勝を果たした
こうしてあっけなくマイホームを決めて後はすすき野にはローンが残るのみ

その頃、我が妊婦生活は苦境に陥っていた−やたらとお腹が張って硬くなる
夜中に石のように固まったお腹を押さえてうめき処方されたウテメリンで
抑える日々

新型肺炎SARSが流行すると騒がれだした
精神的にも不安定な毎日であった
万が一の時は赤ちゃんだけでもとドラマのようなセリフを本気で
旦那に訴えるほどナーバスになっていた

赤ちゃんはというとそんな母親を励ますように腹芸の如く動く
家族三人で仲良く生活できる日を信じいっしょに前向きに生きていこう